漆のお箸は食洗器で洗っても良いのか?
箸屋をしていて、お客様からよく尋ねられることがあります。
それは、「この漆のお箸は、食洗器を使って洗ってもいいですか?」というものです。
現在、たくさんの家庭で食洗器が使われる現代では、皆さまそう思われますよね。
食洗器のカタログには、「漆器」は洗わないでくださいと書いてあるそうなので、なおさらです。
ではここから、食洗器と漆のお箸の関係について書いていきたいと思います。
冒頭でお話しした、よく尋ねられる質問の答えは、「不可」です。
これからその理由をお伝えしたいと思います。
当店の漆塗りのお箸は、天然木(米ヒバ・能登ヒバ等)と天然うるしを使って作られています。
食洗器は、メーカーにもよるとのことですが、食器を洗浄するときに、湯温が60~70℃まで上がるようです。
さらに、すすぎ・乾燥の時には、80~90℃というやけどしそうなぐらいの高温になるものもあるとのこと。
確かに、食洗器は食器の汚れを落としやすいように、高い湯温・高圧の水流・専用洗剤の使用といった、通常食器を洗う時とは違った環境を作り出します。
この厳しい環境に、天然木や天然うるしは耐えられないんです。
この結果、表面のうるしが変色したり、剥がれたり、木地にひずみやひび割れが起こったり等々の恐れがあるんです。
このような不都合なことが起こるかどうかを確認するため、私の自宅では岩多箸店で製作したいろいろなうるしのお箸を食洗器で洗って試しています。
一膳につき数回から数十回という少ない数ですが、長い間テストしていても不都合が出たお箸は今のところありません。
よって、間違って一回入れてしまっても、すぐには上記のような問題はでないのかな~、と私個人は思ってます。
しかし、「不可」には変わりありませんよ!
では、「うるしのお箸はどのように洗えばいいのか」という疑問が出てくると思います。
岩多箸店のおすすめしているうるしのお箸の洗い方は、
①水かぬるま湯で汚れを洗い落とす
②汚れが落ちたかを確認後、やわらかい布やフキンでよく水気を拭き取る
以上です。そんなに面倒じゃないでしょ!
忙しい日々、うるしのお箸を洗うというほんのわずかな時間でいいので、うるしのお箸へ愛情を注いでもらいたい!
そうすれば、そのお箸により一層の愛着もわくと思います。
箸屋として、お客様への素直な気持ちです。
岩多箸店の代表です。
輪島で生まれ、小・中・高まで輪島で過ごし、その時に箸製造の手伝いを経験し、すべての工程を学びました。
金沢大学に進学し、経済学を学び、卒業後北陸銀行に入行。たくさんの方々と出会い、かわいがってもらいました。
16年勤務後、輪島に戻り箸製造の手伝いを始め、先代から経営を引き継ぎ、現在に至ります。
生まれ育ち大好きな輪島から、お箸を熟知して、私たちが作った自慢のお箸を皆様にぜひ使っていただきたいと思います。