岩多箸店には、縁起のいい柄のお箸がたくさんあります
日本には、古くから伝統的な文様がたくさんありますね。
身近にも探せばいっぱいあり、私たちはいつもその文様に触れながら生活をしているといっても過言ではないんじゃないでしょうか?
その伝統的な文様の中には、「吉祥文様」といって、縁起が良いとされている文様がたくさんあります。
岩多箸店では、以前からこの縁起が良いとされている文様を使って、お箸を製作しているんですよ。
これから、代表的ないくつかの文様が、「なぜ縁起が良いのか」ということをお伝えしながら、ご紹介させていただきます。
1.麻の葉(あさのは)
まずトップバッターとして紹介するのが「麻の葉」の柄です。
大人気の「鬼滅の刃」の禰豆子ちゃんが着ている着物の柄として、一気に有名になった柄です。
この「麻の葉」の柄の歴史は古く、平安時代に製作された仏像にこの柄が見られるそうです。
このころは何と呼ばれいたかわからないんですが、近年になって、この柄が麻の葉っぱに似ていることから「麻の葉」と呼ばれ、親しまれるようになったそうです。
ではなぜ「麻の葉」が吉祥文様かというと、麻は非常に成長が早い植物です。
4カ月ほどで4m以上になります。すごいですね!
ということは、1日に3cm以上伸びるんです。あれ、あまり強調されなかったかな。
それはさておき、麻がまっすぐにグングン成長し、病気や害虫に強いことから、「麻の葉」は、「子供の健やかな成長を願う」という意味があります。
また、麻が手間をかけなくても大きく育つことから、邪気を払う力があるとされていて、「魔除け」の意味もあります。
このため、昔から子供の着物によく使われていたんですね。
この「麻の葉」の柄は江戸時代に大流行しました。
そのきっかけというのが、江戸時代の女形歌舞伎役者であった五代目岩井半四郎が、「八百屋お七」という演目を演じた時に、この「麻の葉」の柄の着物を着ていたからだそうです。
今も昔も、流行は有名人によって作られるんですね。
この「麻の葉」の柄。岩多箸店のお箸にも何種類かあります。六角形のひし形を結び付けたような幾何学模様がお箸に映えるため、人気があるんですよ。
2.唐草(からくさ)
次に紹介するのが「唐草」の柄です。
この柄は、蔦が絡み合いながら、四方へ広がっていく様子を表したものです。
この「唐草」柄の歴史はびっくりするほど古く、古代エジプトやメソポタミアで生まれたようです。
世界史で習ったような時代ですね。
ここからギリシャに伝わり、ローマに。その後シルクロードを経て中国へ。
それから日本に伝わってきたといわれています。
英語で言うと、アラビア風という意味の「アラベスク」といいます。
ではなぜ「唐草」が吉祥文様かというと、蔦は生命力が強く、四方八方に向かってどこまでも伸びていきます。
このことが、長寿や一族の繁栄を象徴しており、縁起が良いとされています。
みなさんは「唐草」というと、何を思い浮かべますか?
私が真っ先に思い浮かべたのは、泥棒の姿です。
今でこそあまり見かけませんが、小さい頃は、泥棒が緑の唐草模様の風呂敷を担いで、屋根伝いに逃げていく姿を、テレビや本などでよく見た覚えがあります。
なぜそんなイメージがあるのかと疑問に思い、調べてみました。
昭和30年から50年代にかけて、緑の唐草模様の風呂敷が大流行し、1家に1枚は必ずあるという状況になったそうです。
そういえば、当時のうちにもあったことを覚えています。
どの家どの家にもあるので、泥棒がまずその唐草模様の風呂敷を探し、それを使って盗んだものを持っていくということから、泥棒=唐草模様の風呂敷というイメージが定着したようです。
この「唐草」の柄。岩多箸店のお箸にもあります。緑の地に銀の模様が入った、泥棒がイメージのお箸ももちろんあります。
3.市松(いちまつ)
次に紹介するのは「市松」の柄です。
この柄も、今大人気の鬼滅の刃の主人公、炭治郎の着ている着物の柄です。
また、東京オリンピックの公式エンブレムに採用されている、日本を代表するといってもいいくらいの伝統的な文様だと思います。
この「市松」の柄も歴史は古く、古墳時代の出土品である埴輪に市松模様が施されたものがあったそうです。
ではなぜ「市松」が吉祥文様かというと、規則正しく四角形が途切れずに並んでいる様子には、子孫繁栄や事業拡大の意味が込められており、縁起が良いとされています。
平安時代には、お公家様の衣装の地紋に使われていたほど、格調高い模様だったようですよ。
この「市松」の柄。なぜこのような名前が付いたかというと、「麻の葉」の柄と同じように、歌舞伎が絡んできます。
江戸時代に人気のあった女形歌舞伎役者「佐野川市松」が、舞台で市松模様の袴をはいていたことから、この「市松」柄が大流行。
このため、名前から市松模様と呼ばれるようになったようです。
模様の名前に役者の名前が付くほど大人気だったんでしょうね!
この「市松」の柄。もちろん岩多箸店にも何種類もあります。若い人からは、チェック柄と言われて、人気があります。
4.矢絣(やがすり)
次に紹介するのは「矢絣」の柄です。
この柄は、たくさんの矢羽根を並べて表現した模様です。
もともとは文様の名前ではなく、矢羽根の模様をあしらった絣のことでした。
この絣が人気となり、小紋にも用いられるようになって、「矢絣」が、がらそのものの名前となったようです。
この「矢絣」の柄には、大きく分けて2種類があります。
矢羽根の向きが一方向を向いているものと、矢羽根の向きが2列ごとに反対に向いているものです。
ではなぜ「矢絣」が吉祥文様かというと、弓で射た矢は、まっすぐ前に進み戻らないということから、縁起が良いとされています。
この「戻らない」という意味から、江戸時代には嫁入りの支度に「矢絣」の柄の着物を持たせたといいます。
娘が出戻ることのないようという思いが込められているんでしょうね。
明治から大正にかけて、この「矢絣」の柄のお召と海老茶色の袴の組み合わせが、女学校で流行したそうです。
たしかに、その当時を表す映画などでよく見かけた覚えがあります。
「はいからさんが通る」でもおなじみですよね!
このことから、今でも学生の卒業式でのスタイルでよく見かけます。
私の娘も、卒業式で「矢絣」の柄の着物を着たんですよ!
岩多箸店では、新しく「矢絣」の柄のお箸を作りました。いい感じに仕上がってますよ!
5.宝尽くし(たからづくし)
5番目に紹介するのは、「宝尽くし」の柄です。
この柄は、その名の通り、宝物を集め、散りばめた模様です。もうすでに縁起がいいですよね。
主な宝物として、宝珠・隠れ蓑・打ち出の小づち・鍵・金のう・巻軸・筒守・分銅・丁子などがあります。
この宝物は、中国の吉祥思想に由来していますが、平安時代に日本らしい図案に変化し、定着しました。
これが、鎌倉時代には武家に、江戸時代には庶民に広まったそうです。
この宝物がたくさんある「宝尽くし」の柄。岩多箸店には輪島が誇る蒔絵師の手による豪華なお箸があります!
6.束ね熨斗(たばねのし)
次に紹介するのは、「束ね熨斗」の柄です。
一般的なイメージでは、祝い事に添えられていたり、祝儀袋に添えられている飾りが「熨斗」ですよね。
熨斗紙やお祝いの封筒、祝儀袋の右上にあるあの飾りです。
そもそも「熨斗」とは、アワビの身を薄く長くスライスして引き伸ばし、乾燥させたもののことだそうです。
これを祝い事の酒の肴としていたらしいんですが、そこから祝い事の進物になり、段々簡略化されて飾りとなったそうです。
アワビといえば、輪島では「蒸しアワビ」が有名です。ご存知ですか?
いまでは高級品で滅多に口に入ることはありませんが、私が子供の頃は、おやつとして一個丸かじりをしたものです。
夢のような話ですよね。
この「熨斗」を束ねた柄が「束ね熨斗」です。
たくさんの縁起のいい「熨斗」を束ねることから、多くの人から祝福を受ける意味を持っています。
また、人と人との絆やつながりを表現しているおめでたい柄です。
岩多箸店には、宝尽くし柄と同様、蒔絵師の手描きによる豪華なお箸があります。
7.瓢箪(ひょうたん)
次に紹介するのは、「瓢箪」の柄です。
いわゆるひさごです。当店では、ひさごと呼んでいます。
この瓢箪の柄には、たくさんの意味が込められています。
まずは「子孫繁栄」。これは一つの実からたくさんの種が採れるためです。
次に「商売繁盛」。これは、ツルがものに絡みつき、たくさんの実をつけるからです。
さらには、「厄除け」。悪いものを吸って外に出さないような形だからです。
これらの他にも、瓢箪が3つ揃えば、「三拍(瓢)子」。6つ揃えば、「無病(瓢)息災」という語呂合わせにも使われます。
岩多箸店にも、3種類の「ひさご」のお箸があります。
昔からの定番で、人気があるお箸です。
まとめ
以上のように、縁起が良いとされる吉祥文様のお箸はたくさんあります。
お祝いや記念品などに、意味も考えて贈られてはいかがでしょう。
興味のある方は、当店のオンラインショップに足をお運びください。
喜ばれること請け合いです!
岩多箸店の代表です。
輪島で生まれ、小・中・高まで輪島で過ごし、その時に箸製造の手伝いを経験し、すべての工程を学びました。
金沢大学に進学し、経済学を学び、卒業後北陸銀行に入行。たくさんの方々と出会い、かわいがってもらいました。
16年勤務後、輪島に戻り箸製造の手伝いを始め、先代から経営を引き継ぎ、現在に至ります。
生まれ育ち大好きな輪島から、お箸を熟知して、私たちが作った自慢のお箸を皆様にぜひ使っていただきたいと思います。